水の歳事記 vol.007
いのちを支えてくれる稲の底力
人のいのちに密接につながっている水。季節とともに水のある生活風景をお届けします。
櫓田(ひつじだ)に一羽下りたる雀かな 内田百聞
稲刈りの終わったたんぼに新しい緑の芽が出て、あらたに稲が伸びているたんぼを櫓田(ひつじだ)と呼びました。
寒さが厳しくなってくる霜月(11月)の田園風景は、殺風景なものですが、たんぼの粘り気の強い泥の中から、収穫のときに落ちこぼれた稲の小さな粒が、太陽の恩恵と土の持つ力強いエネルギーを集めて、若芽をだしてくる素晴らしさを感じる俳句です。残っているものを結集していのちが再生してくる力強さを感じます。
青い稲が成育していく間は、たんぼは水を溜め込んで栄養補給をし、夏の間は、水害を回避するために保水しておく貯水池の役割も兼ねて大忙しでした。たんぼの顔が、静かな秋にすずめとひっそりお話している〜そんな風景が見られます。
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